クラウドファンディングの基礎からソーシャルレンディングを理解する
クラウドファンディングという言葉や資金調達の方法についてはなんとなく知ってはいるもののソーシャルレンディングという言葉を聞くのは初めてだ、ほとんど知らない、という人の数はかなり多いのではないかと思われます。
大雑把にまとめてしまうならば、ソーシャルレンディングというのは、「融資型クラウドファンディング」と呼ばれる、クラウドファンディングの「一つの型」を言い換えた別の言葉に過ぎません。
ソーシャルレンディングについては、クラウドファンディングという「親」の要素に含まれている「子」の要素である、と考えると、言葉を理解するための見取り図がある程度つくりやすくなるのではないかと思います。
ソーシャルレンディングについての知識を獲得し、またその利用方法などについて理解していくためには、まずは、ソーシャルレンディングの「親」にあたるクラウドファンディングについての知識や、理解を深めていく必要があるでしょう。
クラウドファンディングの主要なイメージ
不特定多数の個人が、ある特定のプロジェクト、組織などに資金の提供をおこなうことを総称してクラウドファンディングという言葉であらわします。クラウドファンディングというのは「資金調達」の「一つの方法」を指す言葉です。
このクラウドファンディングという「資金調達」の方法について、クラウドファンディングというものをあまり知らないという方の場合であれば、クラウドファンディングという言葉からは、おそらく、以下のような形態のクラウドファンディングがイメージされるのではないかと思います。
ある一つの映画作品を制作するにあたって、スポンサーから資金提供を断られてしまい、制作費の捻出ができない。しかし、映画制作は諦めたくないために、最後の手段として「クラウドファンディング」で資金調達を試みる。
映画の制作に賛同してくれる一般の方々にプロジェクトのプレゼンを行い、クラウドファウンディングによって資金調達をおこない、クラウドファンディングを通して資金を提供してくれた賛同者には、その提供してくれた資金の貢献度に応じて、プロジェクト達成時に、なんらかのリターン(“映画作品の完成と上映”というリターン、エンドロールに名前が出る、非売品の贈呈などの特典によるリターンなど)が与えられる。
これは確かに非の打ち所がない完璧なクラウドファンディングのあり方であるといえるでしょう。しかし、このようなクラウドファンディングは、「一つの型」でしかなく、このような「型」だけがクラウドファンディングなのではない、ということはあまり知られていないかもしれません。
たとえば、先程の映画の例のなかに「プロジェクト達成時になんらかのリターンが与えられる」というものがありましたが、この要素を抜いたとしてもクラウドファンディングは成立します。
クラウドファンディングというのは基本的には「資金調達」の「一つの方法」について指す言葉でしかないのであって、この言葉を成立させる磁場において必要なのは「一つのプロジェクトなり組織に対して、不特定多数の個人から資金を集める」という条件だけです。
クラウドファンディングにおいては、「リターン」が発生する「型」と、「リターン」が発生しない「型」がそれぞれにあるのであって、「リターンの有無」というのは、クラウドファンディングという言葉を成立させるために不可欠な条件ではありません。
クラウドファンディングの「四つの型」について
クラウドファンディングという資金調達のための「一つの方法」は、おおまかに「四つの型」に分類されます。
その分類は、「購入型クラウドファンディング」、「寄付型クラウドファンディング」、「融資型クラウドファンディング」、「株式投資型クラウドファンディング」になります。
このうち、先程例示したような映画制作の場で行われるようなクラウドファンディングは「購入型クラウドファンディング」と言われるもので、クラウドファンディングという言葉を聞いたときに、多くの人が真っ先にイメージするのは、おそらくこの「購入型クラウドファンディング」である場合がほとんどなのではないかと思います。
「リターンの有無」という話でいいますと、「寄付型クラウドファンディング」のみが「リターン」なしで成立する、ある意味では「純粋」なクラウドファンディングであるといえるでしょう。
「リターンなし」の純粋な資金調達などが果たして成立するものなのか、と訝るかたもいるかもしれませんが、被災地への金銭的支援などを目的としたクラウドファンディングが、「寄付型クラウドファンディング」にあてはまる、と書けば、このようなクラウドファンディングのあり方が成立することも納得していただけるのではないかと思います。
「寄付型クラウドファンディング」は、リターンなしで成立するクラウドファンディングではあるのですが、資金提供者に対する「感謝の手紙」程度の「心のリターン」はあるようです。
「融資型クラウドファンディング」こそが、前述したようにソーシャルレンディングを指す言葉です。混同しやすく、その違いについて説明すると少しばかりややこしい話にもなってしまいますが、「株式投資型クラウドファンディング」はソーシャルレンディングではありません。
ひとまずは、ソーシャルレンディングという言葉が「融資型クラウドファンディング」という「型」に対してのみ使うことが可能な言葉であるということだけをおさえておけば充分でしょう。
2.クラウドファンディングという言葉のややこしさ
3.非投資型クラウドファンディングは損得の先にある
クラウドファンディングと資金提供者へのリターン
クラウドファンディングというものは基本的には資金提供者に対する「リターン」がなくても成立するものではあるのですが、それは言葉の定義の段階における話でしかありません。
「寄付型」という例外的な「型」をのぞいた「購入型」「融資型」「株式投資型」のそれぞれのクラウドファンディングの場においては、「リターン」を前提にした資金提供を行うことになるでしょう。
では、それぞれのクラウドファンディングのなかで、資金提供者に対する「リターン」というのはどのようなかたちをとるのか。それをおおまかに見ていくことにしましょう。
「購入型クラウドファンディング」では、資金提供者に、調達した資金をもとに完成させることができた「商品」や「サービス」といった「成果物」がリターンとして戻ってくることになります。「購入型クラウドファンディング」においては、プロジェクトを完遂させるために必要な目標金額が集まりきらなかった場合、リターンなしで終了することになります。
続いて、ソーシャルレンディングである「融資型クラウドファンディング」ですが、この「型」のクラウドファンディングを利用した場合、「融資した元本の返済+金利」という金銭的なリターンがのぞめます。
ソーシャルレンディングを試みる場合は、クラウドファンディング運営会社との間に発生する「取引手数料」を考慮に入れて融資を行うことで、資金回収が有利になります。もし、資産運用の一つの手段としてクラウドファンディングを行うのであれば、ソーシャルレンディングを選択するというのが最も確実なのではないかと思います。
「株式投資型クラウドファンディング」においては、「リターン」として帰ってくるのは「株」です。
クラウドファンディング運営会社を通して「リターン」として戻ってきた「株」の会社が倒産、あるいは、株価の暴落や停滞をしてしまった場合、資金回収が難しくなるというリスクがあるのが「株式投資型クラウドファウンディング」の特徴でしょうか。
「株式投資型クラウドファンディング」は、ハイリスクで資金回収が難しいのですが、そのぶん、「株価の上昇」などがあった場合に限って「ハイリターン」に転嫁しうるという点に目を向ければ、なかなか魅力的なクラウドファンディングであるともいえるでしょう。
ソーシャルレンディングというユニークなクラウドファンディング
「融資型クラウドファンディング」に対して、ソーシャルレンディングという「クラウドファンディングの一つの型」であるということをあまり連想させないような言葉をわざわざ用いており、差異を際立たせているということは、なかなか興味深いことであると私は考えています。
先程、「寄付型クラウドファンディング」についてリターンなしの「純粋」なクラウドファンディング、というような言い回しを使いましたが、このクラウドファンディングという言葉の「純粋さ」という意味で見ると、「融資型クラウドファンディング」というのは、もっとも遠い位置にあるように感じられます。
「購入型」や「株式投資型」といったクラウドファンディングは、提供した「資本」が違った形に変化して戻ってきますが、ソーシャルレンディングにおいては「資本」が「配当金」として交換されて戻ってきます。
「金」と「善意」が交換されるのでもなく、「金」と「商品」、あるいは「金」と「金券」などが交換されるのでもなく、「金」と「金」だけが純粋に交換される、という「融資型クラウドファンディング」は、クラウドファンディングの「四つの型」のなかで、もっとも「金融的」であり、なにか原理的なものを感じさせもします。
しかし、そのような考察をはじめると話がそれていくばかりですから、この場においては、「融資型クラウドファンディング」というクラウドファンディングの「ひとつの型」である、ソーシャルレンディングという選択肢が、「資産運用」としてのクラウドファンディングとして有効な手段なのではないか、という提案をするにとどめておきましょう。